子供の「呼吸が苦しい」を見抜く!
急に寒くなり、体調を崩すお子さまたちが増えてきました。
特にここ最近、RSウイルスやヒトメタニューモウイルスなどの流行や、気管支喘息が悪化しやすい時期ということもあり、呼吸が苦しくなってしまうお子さまがいらっしゃいます。
「熱が出ました」という理由で受診した赤ちゃんが、診察室に入ってきた瞬間「これは大変!すぐに救急車を呼ばないと!」と思ってドキドキしたこともあります。
私たちはよく診察中に「ぜいぜいしたり、呼吸が苦しそうな場合には早めに受診してください」とお伝えしています。ただお子さまたち、特に赤ちゃんは自分で「呼吸が苦しい」と訴えることはできませんし、実際にどうなったら早めに受診したら良いのか分からないという方も多いと思います。
そこで今回はお子さまたちの「呼吸が苦しい」を見抜くポイントについて、より重症なものからお話したいと思います。
・顔色が悪い
まずはお子さまの顔色を見てみましょう。正常な状態では血色はよく、口唇の色はほんのりピンク色をしています。もし顔色が青白い、口唇が青紫色である場合は、かなり呼吸が苦しい状態です。すぐに医療機関を受診しましょう。場合によっては救急車を呼ぶ必要があるかもしれません。
・呼吸の回数が多い
寝ているときや落ち着いているときに、お子さまの呼吸の回数を数えましょう。分かりにくい場合にはお腹に手を当てて、秒針を見ながら10秒間に何回呼吸をするか数えます。呼吸数は1分間で評価をするので10秒間の呼吸回数を6倍します。
標準的なお子さまの呼吸数は以下の通りです。
乳児(1歳未満) 30-40回
幼児(1-7歳) 20-30回
学童 18-30回
もちろん発熱などでも呼吸数の増加は見られますが、乳児で50回、幼児で40回以上が多呼吸の診断の目安になり、早めの医療機関受診が望まれます。
・ずっと唸っている
医学用語で「呻吟(しんぎん)」と言います。息を吐くのと同時にずっと「うー、うー」と唸っています。これは呼吸がかなり苦しいというサインになり、ぐったりしたり、顔色が悪い場合が多いです。速やかに医療機関を受診しましょう。
・呼吸の仕方がおかしい
呼吸が苦しそうって思ったら、お子さんのお洋服をめくっていただき、お胸の動きを観察してください。通常お子さまの呼吸はきれいな腹式呼吸をしています。以下に異常な呼吸の仕方をいくつか示します。
シーソー呼吸:息を吸うときに胸がくぼみ、お腹が膨らむ。
陥没呼吸:鎖骨の上の部分、肋骨の一番下の部分が呼吸に伴ってペコペコと凹む。
鼻翼呼吸:息を吸うときに鼻の穴がぴくぴく開く。
これらの呼吸が見られる場合は、速やかに医療機関を受診してください。
・ぜいぜいする
医学用語で「喘鳴(ぜんめい)」と言いますが、末梢気管支の狭窄による音で、よく喘息の子が起こす症状の一つです。息を吐くときに「ゼーゼー、ヒューヒュー」という音がします。お子さまの鼻から聞こえることもありますし、お胸に耳を当てたときに聞こえることもあります。この音が聞こえるだけで、顔色や呼吸回数が問題なければ急いで救急を受診する必要はありませんが、翌日にはくりにっくを受診することをお勧めします。
お子さまたちが自分で「息が苦しい」と正確に訴えることは難しいです。「苦しい」と言いながらも遊んだり、にこにこと笑顔が見られていれば、そこまで緊急性がないこともあります。一方で遊んだり走ったりしているのに、ゼイゼイしたり胸がペコペコして、診察したら案外呼吸の状態が良くないということもよくあります。
日頃からお子さまの呼吸の仕方を観察していただき、お子さまの呼吸が苦しいサインがみられる場合には、お早めに医療機関を受診してください。
異常な呼吸の様子のYoutube動画があります。掲載許可をいただきましたので、リンクを貼っておきます。こんな呼吸を見たら、私たち小児科医は焦ります。
youtube「Dr. いはらの小児身体診察」より
#見落とされがちな小児の呼吸の異常