育心会 小児 新型コロナワクチン接種 Q&A
当院で小児用コロナワクチンを接種するにあたって
5歳〜12歳未満の新型コロナワクチンについては、努力義務の規定は適応されないワクチンとなっています。新しいタイプのワクチンであるがゆえ、長期的な経過を示すことができないことから、接種に対して否定的な考えを持つ方がいらっしゃることは想像にたやすくありません。しかしながら、医療においてゼロリスクをとることは難しく、安全性というものは、その時点での情報に基づき判断せざるを得ません。当院としましては、接種を希望する方に適切に接種ができるよう、体制を整えていくことが小児医療機関の果たすべき役割だと考えております。接種する選択、接種しない選択いずれの選択も尊重されて然るべきです。少しでも接種にご不安がある方は、急がずじっくりと考えていただくことをお勧めいたします。それぞれの置かれた状況に想像力を働かせ、異なる考えを持つ人々にも意見を強制するのではなく配慮を示すことで、お互いが尊重し合えることが望ましいと考えております。
ー副反応が心配・副反応についての情報が知りたいー
Q.5~11歳の接種ではどんな副反応がありますか?
A.12歳以上と同様に半数以上で接種部位の痛みや倦怠感がみられ、そのほかに半数弱に頭痛、筋肉痛、1割程度に発熱、関節痛、嘔吐、下痢などが確認されています。局所症状は接種後1~2日、全身症状は接種後2~4日に多くあらわれ、いずれも1~2日で回復しています。38℃以上の発熱の頻度は低く(1回目2.5%、2回目6.5%)、腕の痛みや頭痛、発熱がつらい場合は市販の小児用解熱鎮痛剤も使用できます。
米国CDCのデータによると、5~11歳における2回目接種後1週間以内に見られた様々な症状(局所及び全身性の反応や、健康状態、日常生活や登校への支障等)は、12歳~15歳における接種後と比較して、その発現割合が低かったとの報告もあります。なお、2022年1月時点でアメリカでは5-11歳に860万回以上のコロナワクチンが接種されていますが、心筋炎は12例でいずれも軽症でした。
より詳細に知りたい方は厚生労働省新型コロナワクチンQ&A をご参照ください。
https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0116.html
Q.副反応はどの程度様子を見ればよいか、どのような副反応が出たら受診するべきか?
A.発熱、全身倦怠感は解熱鎮痛剤(カロナール®︎もしくはアセトアミノフェン)の内服で症状が軽減するか様子をみてください。局所症状は接種後1~2日、全身症状は接種後2~4日に多くあらわれ、いずれも1~2日で回復することが多いとされています。解熱鎮痛剤を内服してもワクチンの効果に影響はありません。市販の小児用解熱鎮痛剤(バファリン小児用等)を使用しても同様です。なお、副反応が出現する前に、事前に内服することは推奨されていません。
この期間を参考に、2日たっても高熱が続く場合や胸痛その他心配な症状がある場合はご相談ください。
Q.接種後の副反応のケアをきちんとしてくれるのか? 副反応が出たらどこに相談したら良いのか?
A.心配な症状があるときは東京都新型コロナウィルスワクチン副反応相談センター03-6258-5802へ、診察を希望される場合は当院にご相談ください。
Q.カロナールを処方してもらえるか
A.ご希望の方には、ワクチン接種時に解熱鎮痛剤の処方を行います。また、市販の解熱鎮痛剤をお使いいただいてもかまいません。
Q.心筋炎の副反応が出た場合の初期症状とその対応について教えてください。
A.心筋炎の初期症状としては胸痛(小さいこどもの場合は「おなかが痛い」と訴えることもあります)、息切れ、全身倦怠感などがあげられます。ワクチン接種後4日程度の間にこういった症状があらわれた場合はご相談ください。
先に5-11歳向けの接種が始まったアメリカ(2021年11月より開始)では、心筋炎の副反応の頻度は100万回接種あたり1-2件と、12歳以上の年齢における頻度と比較して低いことが報告されています。また、報告された心筋炎は今のところ全て軽症であり、全員が心機能に影響なく回復しています。
ー将来への影響は?ー
Q.成長期のこどもに接種して数年後、数十年後、大人になった時の後遺症が出ないか
将来の妊娠等に影響はないのか
A.2020年から接種が始まったワクチンなので、現時点で2年間の臨床データしかありません。mRNAワクチンの原理として、①接種された人の遺伝子に組み込まれることはない、②mRNA自体は比較的短時間で分解される、③ワクチンによって生じるタンパク質も長期的に残ることはない(そのためにむしろブースター接種が必要となります)とされています。これらの理由から長期的な影響が起こる可能性は非常に低いとされています。
現在のところ、生殖機能に影響を及ぼすといったデータは示されていません。
ー効果についてー
Q.効果の継続性・効果はどのくらいあるのか、重症化や感染をどこまで防げるのか
初期に開発されたワクチンでオミクロン株などの変異株に効果があるか
A.アルファおよびデルタが流行している時期に行われた約2300人の5-11歳を対象とした米国を中心に実施された治験では、新型コロナウイルス感染症の発症予防効果は2回目のワクチン接種後で90.7%でした。オミクロンに対しての効果についてはこの年齢ではまだデータが揃っていませんが、12歳以上に関しては3回目接種後は70-80%と報告されています。12歳以上の年齢でのデータでは、オミクロンに対しても重症化予防効果があり、また死亡率も入院率もワクチン未接種の人で高いということが世界中で報告されています。なお、5-11歳におけるワクチン接種後の長期的な時間経過に伴う抗体価の推移、効果の持続性については現時点では不明です。
ー感染した場合と接種した場合のメリット・デメリットー
〈ワクチン接種をするメリット〉
CDC(米国疾病対策予防センター)は、
- 新型コロナにかかっても発症、重症化、死亡を予防できる可能性がある
- 予防接種を受けられない兄弟やハイリスクの家族への感染リスクを下げる
- 学校やそのほかのグループ活動に安全に参加できる
としています。
日本小児科学会は、5~11歳への接種は、12歳以上の健康な子どもへのワクチン接種と同様に意義があるとしています。
〈ワクチン接種をするデメリット〉
ワクチン接種後の副反応があります。
- 16~25歳のコロナワクチン接種と比べると副反応症状が出る頻度は低いとされていますが、他の不活化ワクチンと比べると副反応は起きやすいといえます。
- 特に注意すべき副反応として心筋炎がありますが、発症率は10~20代と比べて非常に低く、全員回復していることが報告されています。
- 開発されて10~20年経過しているワクチンではないため、10~20年後の影響については現時点でお示しできるデータはありません。ただしmRNAワクチンは短期間で分解されるため、体内に残ることはなく、また遺伝子に影響を与えることは考えにくいです。
〈ワクチン接種をしないメリット〉
ワクチンの副反応の心配がありません
〈ワクチン接種をしないデメリット〉
発症、重症化する確率が高くなる可能性があります。
新型コロナに感染した場合の 10 ~ 20 年後の後遺症についてはまだ分かっていません。既に成人ではコロナに感染後の後遺症として倦怠感や息苦しさ、胸の痛み、Brain Fog(=脳が霧がかかったようにはっきりしない状態を示す言葉)などが報告されており、米国小児科学会は小児についても同様の懸念があるとしています。
ー持病への影響ー
Q.食物アレルギーがある場合の接種の危険性は?
A.コロナワクチンでは、インフルエンザワクチンにおける卵アレルギーとは異なり、食物アレルギーとの直接的な関連はありません。アレルギーがあるから副反応が起こりやすいということはありませんが、アナフィラキシーショックの既往がある場合は念のため院内で30分待機して頂くようにしています。
現時点では、コロナワクチンの接種禁忌(絶対に接種してははいけない理由になること)は、過去にコロナワクチン接種による強いアレルギー反応(アナフィラキシーなど)を起こした人だけとなっています。
Q.基礎疾患や発達障害グレーゾーン、ADHD疑いの場合、早めに接種した方が良いのか
A.喘息や心疾患、1型糖尿病などの基礎疾患のある方は、新型コロナ感染症に罹患した場合、この基礎疾患が悪化することが懸念されていますので、接種が推奨されています。
発達障害やADHDに関しては、新型コロナウィルスに感染・万が一重症化した際に日常生活に変化が起こるストレスと、接種行為自体についてのストレスを比較し、それぞれが児に及ぼす影響を検討してください。
Q.熱性痙攣の既往があるため、副反応による痙攣が心配
A.5-11歳の38℃以上の発熱の頻度は低い(1回目2.5%、2回目6.5%)ですが、ワクチン後の発熱があった場合は熱性痙攣が起こる可能性はあります。但し、対応は通常の熱性痙攣と同じで良いでしょう。
ー新型コロナウイルスに感染歴がある場合ー
Q.接種した方が良いのか?
感染後どのくらいの期間内で接種すれば良いのか?
感染後どのくらいの期間抗体があるのか?
A.一般的に(現時点での臨床データは18歳以上となりますが)新型コロナウイルス感染症に感染した後でもワクチンを接種した方が良いとされています。感染後、接種するまでの期間については、学術的にまだ定説はなく、「新型コロナウイルス感染症から回復し、隔離解除後に接種が可能」とされています。また、感染後どのくらいの期間、発症予防や重症化予防に必要な抗体量が維持されるのかはわかっていませんが、アメリカのCDCは「感染後数ヶ月は再感染のリスクは低いが、時間と共に免疫力が低下してくる」と記載しています。日本感染症学会の提言では「免疫を回避する変異株が出現しつつある現状では症状の程度に関わらず回復後の早期の接種が望まれます。」と記載されています。
感染後に接種を受けた場合、1回目の接種後に出る副反応が未感染の人よりも多いことが報告されていますが、2回目の接種では未感染の人と副反応の差はないことが報告されています。
ー接種についてー
Q.ワクチンの量・接種回数・間隔や接種方法は大人と一緒か
A.5~11歳で接種する有効成分の量は、12歳以上で接種する量の3分の1になります。接種回数は12歳以上と同様、3週間の間隔で2回接種します。現在3回目接種の対象になっているのは、18歳以上の方のみです。12歳未満で1回目を接種した場合で、2回目までの間に満12歳の誕生日を迎えた場合でも、2回目は小児用ワクチンを接種することになります。
接種の方法は、成人と同様、肩への筋肉注射となりますが、そもそも世界的に不活化ワクチンは筋肉注射で行うことが一般的となっており、接種方法自体は全く特別なことではありません。接種を受けることを決められた場合は、その他のワクチンと同様に、可能な範囲でご本人に注射の意義を事前にお伝えいただき、落ち着いて受けられるよう安心させてあげると良いでしょう(ご褒美を用意しても良いかもしれません)。もしお子さんが泣いたり動いたりしてしまいそうな時も、スタッフが安全にサポートいたします。安全の確保が難しい場合は、接種を中止させていただくこともありますので、ご了承ください。
Q.接種しないことで通学や行事参加への制限がかからないか心配
A.集団生活において、感染状況や重症化率の変化によって制限がかかる可能性はあるかもしれません。しかしながら、それは良い悪いを判断するものではなく、あくまでも接種の有無での区別であり、差別とは異なります。接種しないことを理由にいじめや嫌がらせが起こることはあってはならないことです。
法務省のHPでも、コロナに感染した方、ワクチン接種をしない方に対しての差別や偏見について啓発しています。https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken02_00022.html
ワクチンを接種する選択、接種しない選択について、どちらも尊重されるべきであり、当院では必要な情報を元に接種を希望するお子様とそのご家族のために、小児専門医療機関としてその役割を果たすべきと考え接種体制を整えております。
Q.接種してコロナに罹らない保証はないし、接種して副反応が強く出るなら打たない方が良いだろうし、どちらを選択して良いかわからない。不安しかない。
A.ワクチン接種の効果に期待されることとしては、感染予防はもちろんですが、もし感染してしまった場合の重症化・入院・死亡・後遺症の予防もあります。パンデミックが始まって以来、2022年2月時点までに1250万人以上の小児が感染しているアメリカでは、コロナウイルス感染後の多系統炎症性症候群(MIS-C)という全身の臓器に炎症が起こる合併症も多数見られており、コロナワクチンはこの合併症の予防にも有効性が証明されています。日本ではまだあまり報告されていませんが、今後感染者の母集団がさらに増えた場合は状況が変わって来る可能性もあります。なお、オミクロン変異体に対しても、既に成人においては重症化・入院・死亡を防ぐ効果がわかっています。
また、5-11歳の場合、ワクチンによる副反応の多くは16歳以上と比較すると頻度が低いことが報告されています。主なものは、注射した腕の痛み(70%)、頭痛や倦怠感(20-40%)、発熱(約7%)でした。なお、CDCの報告によると、2022年1月時点でアメリカでは5-11歳に860万回以上のコロナワクチンが接種されていますが、心筋炎は12例でいずれも軽症でした。
こういった接種のメリットやデメリットを理解された上で、ご家庭内でよく話し合って頂くことが大切です。正解がない中、どちらかを選択する難しさや不安を感じる気持ちはよく理解できるものです。接種は義務ではありませんので、少しでも接種に不安が残る場合には、接種を見送る判断も間違いではありません。逆に、接種をすることを決めた方に対しては、安全に接種できるようにサポートして参ります。
Q.接種後の死亡例などきちんと報道されていない・安全性が確立されていない
A.厚生労働省HPにおいて、予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会の資料が公開されています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000208910_00037.html
医療においては、残念ながらゼロリスクとすることは難しく、安全性についてはその時点においての情報をもとに判断せざるを得ません。
ーその他ー
Q.専門家がどの程度推奨するのか
A.小児科学会としては基礎疾患がある児には重症化予防の意義が、基礎疾患がない子においても同様の意義があるとしています。小児については、現時点において、オミクロン株に対するエビデンスが確定的でないこともあり、今後の最新の科学的知見を踏まえ、改めて議論することが適当であるとされました。詳細は以下をご参照ください。
小児科学会「5~11歳小児への新型コロナワクチンに対する考え方」https://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=404
Q.インフルエンザの予防接種は毎年受けていないが、コロナの接種は必要か
A.現時点では、インフルエンザワクチンと同様に小児においては努力義務の規定は適用されていません。接種希望の方に接種可能ですし、接種希望のない方に強制されるものでもありません。なお、インフルエンザワクチンは、感染予防だけでなく、重症化を防いだり集団免疫をつけることも目的に定期接種とされている国も多くあります。コロナワクチンもインフルエンザワクチンも、日本においてどのような位置付けになっていくかは今後変わっていく可能性があります。
Q.海外でのアジア系小児の前例と副作用の種類や割合を知りたい
A.アメリカでのファイザーワクチン治験の際、アジア系を含む複数の人種で行われましたが、副反応の発現において明らかな人種差は特に認められませんでした。また、CDCで定期的に公開されているACIP(Advisory Committee on Immunization Practices)による副反応についての統計によると、2021年12月までに報告された5-11歳の小児の副反応報告例にも様々な人種が含まれていますが、特にアジア系で副反応の頻度や重症度が高くなるといった報告は現時点ではありません。