お尻の赤み ~おむつ皮膚炎(おむつかぶれ)~-「育心会」のコラム一覧

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お尻の赤み ~おむつ皮膚炎(おむつかぶれ)~

お尻の赤み ~おむつ皮膚炎(おむつかぶれ)~-「育心会」のコラム一覧

お尻の赤み ~おむつ皮膚炎(おむつかぶれ)~

肌寒く感じる日が増え、空気も乾燥してきました。

この季節になると風邪や胃腸炎、他にも体調を崩すこともあり、

お子さんの場合、下痢を伴い、長く続くことがありますね。

最近、「下痢がなかなか治らなくて、お尻が真っ赤になってしまって・・・」

と皮膚科を受診される方がおられます。

今回はそのようなおむつ皮膚炎についてのお話です。

 

1)おむつ皮膚炎とは?
おむつの中は常に蒸れていて、尿、便、汗などによる刺激が多く、おむつ替えの際に拭き取る刺激も加わるため、かぶれや感染症をおこしやすくなっています。
おむつ皮膚炎は、主におむつそのものや排泄物によるかぶれのことを言いますが、他にもカンジダ菌による症状、また汗による湿疹も含みます。

 

2)おむつ皮膚炎はどのように起こるの?
おむつの中は常に湿度が高い状態で、さらに尿や便が漏れないように防水シートで被われているため、高温多湿が続き、皮膚はふやけた状態になりやすくなっています。さらに拭き取りなどの刺激が加わると、ふやけた皮膚は傷つきやすく、バリア機能が弱っています。
そこに尿中のアンモニアや便中の酵素などの刺激が加わると、炎症が起きておむつ皮膚炎ができることになります。
軟便、下痢など、便が軟らかいほど皮膚がふやけやすく、また未消化の食物のカスの中の酵素の刺激も多くなり、下痢の回数が多くなると、さら皮膚炎の症状が悪化しやすくなります。

肛門周囲の赤み、ブツブツした赤い丘疹から始まり、ひどくなると皮膚が剥けた状態(びらん、潰瘍)となり、おむつ替えの時に痛がって泣くこともあります。

症状は便の状態による影響が大きいです。便が軟らかく、特に水分量が多い下痢便では、おむつに吸収されるより早くおむつの中で広がりやすいため、肛門周囲だけでなく広範囲の皮膚炎になることがあります。

3)治療
①皆さん気をつけておられると思いますが、おむつをこまめに取り替え、尿や便が長時間皮膚に付かないようにすることが大切です。
汚れたおしりを拭くときは、こすらずにやさしく拭き取るようにしましょう。
便の汚れをきれいにしようと乾いた紙や布でゴシゴシ拭き取ると、こすっていることになり、皮膚にかなりの刺激になります。
ぬるま湯で濡らしたティッシュかガーゼで、そっとぬぐい取るようにします。

可能な状況であれば、シャワーで流す方が良いでしょう。
そして拭いた後やシャワーの後は、皮膚をしばらく空気にさらし乾燥させてから新しいおむつをつけましょう。

 

②赤みに応じて、外用薬を処方します。
<軽い赤みの時>
白色ワセリン(プロペトなど)、アズノール軟膏、亜鉛華軟膏などをおむつ替えの度に塗ります。これらを塗ることで皮膚を保護し、尿や便からの刺激を少なくすることができます。
<赤みが強い時、びらんなどの時>
短期間、弱めのステロイドを外用します。
朝夕の1日2回はステロイドを塗った上に亜鉛華軟膏を塗り、日中は亜鉛華軟膏をおむつ替えの度に塗ります。

赤みがおさまったらステロイドの外用は中止し、亜鉛華軟膏のみ外用します。

◎おむつ替えの際に、皮膚についている亜鉛華軟膏を全部取ろうする必要はありません。 こすることが刺激になって悪化することがあります。尿や便の汚れのみふき取り、足りない部分に亜鉛華軟膏を塗りましょう。

③下痢が続いている状態では皮膚も良くなりにくいので、皮膚のケアに加えて下痢の治療も重要です。下痢が落ち着いてきてから皮膚も良くなってくる、という感じです。

 

4)おむつ部のカンジダ症のこともある!

おむつ皮膚炎と間違えられやすい疾患にカンジダ症があります。

カンジダ菌は消化管に常在する菌で、便と共に少量排泄され、蒸れているおむつの中で増殖したときに症状が出ます。

 

陰部、鼠径部に紅斑(赤み)丘疹(ブツブツ)膿疱(膿をもったブツブツ)が見られ、顕微鏡検査でカンジダ菌が確認できると診断することができます。

この場合はステロイド軟膏ではなく、抗真菌剤を外用する治療を行います。

おむつ皮膚炎とカンジダ症は下痢の時にしばしば同時に起こることがあり、分かりにくいこともあります。赤みが続く時、治りが悪い時は一度ご相談ください。

 

(参考)

・外来でみる子どもの皮膚疾患 診断と治療社

・馬場直子:知っておきたい「小児の皮膚」おむつ皮膚炎. 小児科臨床 60 :1311-1316, 2007

2023.01.12

院長 大熊 喜彰
院長 大熊 喜彰
  • 記事監修
  • 院長 大熊 喜彰
  • 日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
    医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)
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